密男〜みそかお〜




二の腕と胸板の間にすっぽり納まってしまうのは体躯のせいだ

納まりよく納まり、ぬくぬくと体温を分かち合う

けして、守られたいとか包まれていたいとか、そんな感傷的なコドモじみた感情ではない。

出し抜こうと思えば出し抜ける距離で、身体と精神(こころ)を明け渡しながら、

「寝首を掻こうと思えば、ワタシだって掻けるんですよ〜」とにんまり笑いながら、微かな体臭に鼻先を埋める優越感。

口許が弛む

「…どーした?ヘイさん?」

片目を開け、ゴロベエが訊ねる

「いえ、なかなか…シアワセな状況だと思いまして…」

くつくつと、込み上げる笑いを噛み殺し、ヘイハチはゴロベエの腕に顔を寄せる。

無防備には優しく柔らかい腕(かいな)の下に、牽かれれば満ち満ちた筋肉が宿り、期せずしてそれは刃を振るう

「ゴロさんは、ワタシのモノですから、何人(なんぴと)たりとも、触れること罷りならず、と宣言したいトコロだと」

細い眸をさらに細くし、ヘイハチは笑ってみせた

「…思っているトコロです」

口唇を少し尖らし、ゴロベエのそれを強請ってみせる

「…どうだかの」

「おや?ご不審で?」

「ヘイさんは世渡りが上手そうだから」

(…「心外な」…)

ハイハイ、とゴロベエは天井を仰ぎながら、己が両手を後頭部に組む。放りだされた

ヘイハチの頭は、額を胸板に預けたまま、所在なさげだ

「某はただの密男になりそうだ…」

「密男…?」



ああ、なんとくすぐる言葉だろう

密男…公に出来ない愛しい人

自惚れてしまいそうな、柔らかな響き

「公に出来ないほど、いいってこともありますので…密男、どきどきしますね」

「楽しそうだの」

「そりゃあもう、ゴロさんから“密男”など聞くと、ふしだらにワクワクします」

「某もこそこそするのは性質(たち)に合わないんでな」

ヘイさんが楽しげに浮気なんぞしないように、

シチさんに釘を刺しておくためにも

ゴロベエは、ヘイハチの肌の柔らかな場所へ印を残した




えみ様より


妖しい58を頂きました!ヘイヘチ可愛いッ…!!
ごっつ、ゴロさんに甘えてます。「寝首〜」の台詞が大好きです。
えみ様、有難うございました!また下さい♪♪


『奥州一言庵』様へ