Please





流血注意。








それから幾度かの情事の後。

身支度を整えるゴロベエに、ヘイハチが布団の中から意味深に笑いかけた。

普段から常時笑っているようなこの男の変な微笑みに、ゴロベエは「どうした」と惹きつけられる。

「すみませんねぇ、私の身体は使い古しで」

何のことだと最初は思ったが、その妙に自嘲の匂いのする笑みに、そういうことかとゴロベエは苦笑した。

「お馬鹿。気にすると思ったか」

「男は誰でも始めてを気にするでしょう」

「それを言われると何とも、な」

「でも!」

と、ヘイハチは陽気に笑って蒲団の上に転がって、腕を頭の後ろに回して枕にし、天井を見上げた。

「本当に好いて抱かれたのは貴方が初めてですよ」

「ヘイハチ…」

戦中は、日常茶飯事だったコト。

身体も小さければ年若く、階級も低い者が女の代用をさせられる話などは掃いて捨てるほどあった。

今考えれば、ヘイハチもその対象から免れることが出来ず、野生じみた欲望の的になっていた。

かわいそうに、とゴロベエはヘイハチの頭を優しく撫でた。

すると、ヘイハチは静かに「ゴロさん」と呼んだ。


「一つ、協力してくれませんか」

「なんなりと」

ヘイハチは脱ぎ捨てたベストから、先日ゴロベエから貰った耳飾を取り出す。

そして、その耳飾を穴の開いていない耳にセットした。

「これを、このまま握ってください」

「何」

ヘイハチはしっかりとゴロベエを見ている。単純な冗談や狂気ではなさそうだ。

「…そんなことをして開ける物ではない」

ゴロベエが厳しい顔で諌めるが、ヘイハチは涼しい顔をしている。

「ちゃんと消毒しますから」

「駄目だ」

「じゃあ、自分でやります」

「ヘイハチ!」

慌ててゴロベエが耳に当てたヘイハチの手を取る。

ヘイハチはニヤリと笑い、ずらすようにゴロベエの手を耳飾ごと自分の耳に当てた。

「ねえ、ゴロさん。このまま一思いにどうぞ」

はずされた留め具の先端は針状になっていて、このまま貫けば穴は空く。

しかし、 本来そのような開け方をするものではないし、第一傷口が膿んでしまう可能性もある。

ゴロベエが沈黙していると、口付けを強請るような甘い息がゴロベエの耳に纏わりついた。

「私がいいと言ってるんです。ほら、早く」

「処置に文句は言わせぬぞ」

「それはゴロさんの指示に従いますよ」

ふう、とゴロベエは溜息を付いた。そして、ヘイハチを抱き寄せて、衣服の上から己の肩を軽く噛ませてやる。

「ここから口を絶対に離すな」

「食いちぎってしまってもいいんですか?」

「そこまで柔には出来ておらぬ。安心せい」

ゴロベエはヘイハチを強く抱き寄せた。そして、そのまま一気に貫く。

そして同時にゴロベエの肩に鋭い痛みが走った。



「言わんこっちゃない」

ゴロベエがまだ噛み付くヘイハチの歯をゆっくり肩からはずしてやる。

ヘイハチの眦にうかんだ涙を掬ってやると、ヘイハチは「ははっ」と笑った。

「痛かったです」

「馬鹿なことを」

「いいんです、馬鹿で」

血まみれになったヘイハチの耳には、しっかりとゴロベエの耳飾がついていた。

ヘイハチは恐る恐るその耳飾に触れると、うっとりと触ってみせる。

「この穴は、ゴロさんに空けて貰ったんですね」

「そうだな」

「少し、重いな」

「まぁな。じき慣れる」

ゴロベエが手ぬぐいでヘイハチの耳を耳飾ごと包んでやる。

すぐに真っ赤に染まる手ぬぐいを見て、ゴロベエは嘆息した。

「消毒するぞ。処置に文句は言わせぬと約束だからな」

「はぁい」

ヘイハチはなんとも気の抜けた、嬉しそうな返事をした。




END


うがぁー!!消化不良甚だしい!!スミマセン。

この話でもうひとパターンあったんですが、それは余りにも痛々しいので止めました。

何この子、病んでるの?って思われそうなんで。病んでないです。

実は全部、非オタの子とお泊り会をした時に出た話。

ピアスを病院以外で開ける時って妙にやらしいって誰かが言った為に異常な盛り上がりを見せた(笑)。

実はジパング用に考えてたネタ。幕末じゃやれない。

こんな話書いといて何ですが、私はピアスは開いてないです。ぶっちゃけ怖いので。



関係ありませんが、実は、これ書いているすぐ側で両親が歓談してます。

私、度胸ついたなー。

先日の夏コミの新刊で、製本を両親に手伝ってもらった馬鹿は私です。


あー、何言訳してるんだろ。