Prease
「ゴロさぁんッ」
絶え間ない嬌声が、村はずれにある侍用の小屋に響いた。
普段であれば声など殆ど出さないのに、今夜は仲間の侍が橋向うの偵察に行っているので
その気負いが無い為か。
蒲団に顔を押し付けて、脚を開いて腰を上げ、その腰を支えるゴロベエと、横に開いた腕だけで何とか
この微妙なバランスを保っている。
膝は力が抜けて使い物にならない。ゴロベエの支えがなければすぐに沈んでしまうだろう。
後ろから貫かれた痛みは、並大抵のものではない。けれど今はその痛みは快楽に変わり、
欲情の波が押し寄せるがままに、腰を振る。
体が小さく、まだ年若かったヘイハチは、大戦時、男の欲望のはけ口には丁度良かった。
上司や同僚に腕を掴まれ、無理矢理犯されることも少なくない。
トラウマになるほど弱くもなかったが、身体の隅々を弄られ、己の欲望を突き出してくる野郎どもに抗う術もなく、
また抗った所で平手の一つ二つ飛んできて、身体に痛い思いをするだけなので
次第に慣れるということを覚えていった。
それなのに、今またここで――
自ら望んで抱かれているなんて。
ヘイハチは背中を捻ってゴロベエを見た。ゴロベエは少し笑うと、繋がったままヘイハチの体を起こす。
その瞬間、内壁が違う方向にえぐられて、思わず声が出た。
「辛くないか」
優しい言葉に、ヘイハチは頷く。
「ゴロさんは優しいから」
「気恥ずかしいことを申すな」
ゴロベエが笑うと、ヘイハチも笑う。
ゴロベエに背中を支えられ、そのまま仰向けに倒された。
そして、脚が大きく開かされ、向かい合ったまま、突かれる。
「っぁ…ッ!」
甲高い嬌声と、液体の擦れる卑猥な音が、やけに大きくヘイハチの耳に届く。
ゴロベエはだんだん限界が近づくのを感じて、ヘイハチの熱に潤んだ目を見た。
「ゴロ、さんっ」
「いくか」
「違います…ゴロさんの命、私に下さい」
ぐっと締め付けられて、ゴロベエは更に強くヘイハチを突く。
「欲しいのか」
尋ねると、ヘイハチは荒く不規則な呼吸の合間に、小さく笑って頷いた。
「他の、誰にも、渡したくないから」
「弱ったな」
ゴロベエは苦笑した。
「某はサムライ。サムライの命は大将のものだ」
「そう、でしたね」
ヘイハチはスミマセンと苦笑する。
「ならば、代わりにこれを下さい」
するとヘイハチが、手を伸ばしてきてゴロベエの耳飾に触れた。
ゴロベエは、身体を止めるとピアスになっている、耳飾を取ってヘイハチに握らせてやる。
南出身者がつけつ、綺麗に磨いた動物の骨で作った耳飾は、チャラとヘイハチの手の中でゆれた。
「ご無理言いまして」
「馬鹿者、素直に礼くらい言え」
「ありがとうございます」
ぐい、と大きく突かれて、ヘイハチは一際大きい嬌声を上げる。
「ヘイハチ、いっていいぞ」
「あ、ああっ、っああッ…!」
痙攣したように肩が震え、ヘイハチはぎゅっと目を閉じる。
そして、そのすぐ後にゴロベエも。
「ヘイさん、そんなものどうする」
先ほどから隣で貰ったばかりのゴロベエの耳飾で遊んでいるヘイハチを、ゴロベエは不思議そうに眺めている。
「おぬし、耳に穴は空いておらぬだろう」
ゴロベエがヘイハチの耳朶を触ってみると、確かにそこに穴は空いていない。
「いいんです」
ヘイハチは笑った。そして、意味深にゴロベエに口付けた。
続く
すみません、続きます。